内 向 き の ニ ッ ポ ン
 
カジュアル衣料で大ヒット中のユニクロを展開するファーストリテイリング社の柳井正会長兼社長が2012年から社内の公用語を英語にすると発表しました。そのこと以上に、グループ社員3000人に衝撃と戸惑いが走ったのは「今年は民族移動の年、年内に数百人規模の社員に海外勤務を経験させる」という経営者の鶴の一声でした。団塊の世代が若者だった1970〜80年代は、競って海外勤務に出たものですが、今の20〜30代は、企業横断的にできれば海外は行きたくないなという男子が過半数だそうです。

人口が減る日本だけでは企業の成長は限界がある、真のグローバル企業となるためには、利益の多くを世界各地で稼がなくてはならない、そのためには日本以外の市場を肌身で知る人材が不可欠である。これはグローバル企業を志向する経営者に共通する考えです。予想できない困難を自分一人で克服する経験は、その人間を強くたくましく成長させる、生きた見本がありました。サッカーのワールドカップ南アフリカ大会での日本チームの予想外の大健闘を牽引したのは誰だったでしょう。本田圭佑、松井大輔、大久保嘉人、長谷部誠ら20歳代の選手は皆、ヨーロッパ各国のプロリーグに挑戦した、あるいは今も人気チームで活躍中です。日本一より世界一に価値を見出した男たちと言っていいでしょう。

幕末に鎖国から世界に雄飛しようとして「海援隊」を作った坂本龍馬から140年以上。戦後でも何でも見てやろうの小田実、ヨットで太平洋単独航海した堀江謙一、「深夜特急」の沢木耕太郎ら、日本から世界へと果敢に飛び出て行った日本人の系譜があります。その究極は冒険ですが、この分野でも植村直己という世界に誇るべき日本人がいました。その名を冠した「植村直己冒険賞」を先月受賞した中西大輔さん(40歳)は、私たちに身近な自転車に乗って一人で、1998年から2009年まで11年間で13万km走って世界を2周した人物。よっぽどタフでハードな男性かと想像するでしょうが、外見はどこにでもいそうな気立ての優しい人です。「世界のどこに行っても、いろんな人から親切にされた。身の危険を感じたことはなかった」と飄々と話すなかに、世界だ海外だと特別視する日本人の島国根性こそ21世紀の今、古く遅れた意識ではないかと言外の批判が聞こえる思いでした。
  

medical mates July 2010