電車や地下鉄に乗ったら、車内の大半の人が、スマートフォンを手に何やらやっている光景が日常となっています。そのうち半分くらいはイヤホンで音楽を聞いている。そう、デジタル時代の現代では、音楽は天から降ってくるもの、つまりダウンロードして聞く時代なのです。すでにCDの売り上げを追い越したそうです。そのCDがとうに駆逐したアナログの円盤レコードなど、もう絶滅と思いきや、なんと世界的に人気を回復しているというから驚きです。中古品マーケットが活況を呈しているだけではありません。21世紀に入って、アメリカの若いミュージシャンが自分の楽曲をレコードで製作したのがきっかけとなって、世界中のレコード売り上げが増加に転じているそうです。日本も2009年に10万枚だったのが、13年には26万枚に急増しました。6月には若者に人気絶大の福山雅治が、歌手生活25年で初のアナログレコード「魂リク」を発売するというから、これはもう大ブームです。


「魂のこもった歌声を、より豊かな音色で、実際の生音に近い状態で聞いてもらいたいから」と福山本人が言うように、アナログレコードの魅力は、息づかいやその場のノイズまで再現される人間っぽさにあります。アナログ版「魂リク」に収録されている13曲をみると「銭形平次」(舟木一夫)、「長崎は今日も雨だった」(内山田洋とクールファイブ)、「心の旅」(チューリップ)、「雨やどり」(さだまさし)、「元気を出して」(竹内まりや)など昭和の名曲のカバーです。平成のトップアーティストが昭和を歌う、これが今の時代の象徴かもしれません。スマホやパソコンでは、「昭和の名曲ベスト100」や「昭和の青春歌50選」など、J−POP以前の歌曲が続々とアップされていて、簡単に聞けるようになっています。平成の世も27年目を迎え、昭和生まれにはあの時代が懐かしく、平成生まれには新鮮に見えてきたのでしょう。


平成生まれが社会の4人に1人となった今、10〜20代の女優たちの「昭和顔」が話題になっています。例えば、NHKの朝ドラ「あまちゃん」(2013年)で、アイドル志望だった女性(小泉今日子)の若い時代を演じた有村架純は、1980年代の松田聖子のようなボブヘアが似合い、昭和のアイドルの雰囲気を巧く出していました。顔立ちは素朴で眉も太目だし、化粧は今と比べるとなんとナチュラルなことか。今や映画、ドラマ、CMに引っ張りだこで、テレビ画面で見ない日がないほどの売れっ子です。映画「小さいおうち」でお手伝いさん役を演じて、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した黒木華も、一重まぶたで丸顔、会う人をホッとさせるようなおかめ顔です。蓮佛美沙子、二階堂ふみ、松岡茉優、杉咲花といった人気女優の顔をじっと見ると、目と目の間が離れていて、何となく親しみを感じる、やや扁平な顔立ちです。きっと昭和生まれのおばちゃんなら、ああ、私の若いころに似ていると言いそうです。目鼻立ちのはっきりしたハーフのタレントが持てはやされ、付けまつげ、マスカラ、アイラインで目を大きく見せるパッチリメイクが流行した平成時代。相手をハッとさせる美しさではあっても、なぜか緊張感も与えてしまう。それより、昭和の時代に見慣れた、人に安らぎを与えるような和風顔がいい。そんな変化はどんな時代の風によるものか。昭和の高度成長期に「モーレツよりビューティフル」というCMフレーズが大流行しました。「経済より文化を!」「もうけることより楽しむことを!」というメッセージでした。すべての物事がスピードアップしている21世紀社会で、レコードの醸し出す人間っぽさ、昭和顔女優からにじむ温かい親しみこそ、多くの人が心の奥で欲しているのでしょう。昭和の和風顔人気は、その証しかもしれません。単なる懐メロ、レトロブームではないような気がします。




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