「地球上に生きる約70億人のうち、8億人が1日1ドル25セント(約150円)未満の収入で日々の生活をしのいでおり、予防可能な病気で数十億人が死のリスクにさらされている」。アメリカのオバマ大統領が9月27日に貧困を撲滅する国連サミットで演説し、こういう状況を放置することは甚大な不正義だと世界のリーダーに呼びかけました。そう、まだまだ世界には貧しい地域があるからねえ、という感想を抱いた日本人はかなり多数いるだろうと思います。つまり、貧困はよその国の人ごとという認識。ところが、現実はそうではありません。日本にも貧乏な人がたくさんいるのです。生活保護世帯は年々増えており、貧困率で比較すると、OECD加盟30カ国では18%のメキシコをトップに、17%で3位のアメリカに続き、日本はなんと15%で堂々の?4位にランキング!世界的ベストセラーになったフランス人研究者・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」では、日本の貧困層は4割いるとされています。え、日本って世界第三の経済大国じゃなかったの?


もちろん、国家単位のGDPでは3位です。ところが、1人あたりの名目GDP(USドル換算)となると、最近の統計では187カ国中27位で、年収は3万6331ドル。あまり豊かな国とは言えません。街中ではここ数年、貧しさを実感する人が増えているようです。書店に行ってみて、驚きました。貧乏、貧困というキーワードの書籍が山のようにあふれています。「ニッポンの貧困」「すぐそこにある『貧困』」「絶対貧困」「子どもの貧困連鎖」「反貧困」「下層化する女性たち」「最貧困シングルマザー」「老後破産」……。目がくらみそうです。日本では年収122万円未満の相対的貧困層が16%もいて、子どもの貧困率も16%を超えて、ざっと6人に1人の勘定。いずれも過去最高の数字だそうです。政府が昨夏、「子どもの貧困対策大綱」を初めて策定したのも、もう見過ごせない現実のひどさに突き動かされたからでしょう。子ども、若者、教育への国家支出は、国際比較では低水準だという実態も明らかです。1億総中流幻想が木っ端みじんに砕け、格差社会の断面がむき出しになってきました。


子どもたちだけでなく、若者の貧困も大問題です。仕事がない、あっても非正規で収入が少ない。さらに女性の貧困も目立ってきました。日本の労働者の4割が非正規職員で、その多くは女性です。離婚後、シングルマザーで生きる選択をした女性は、仕事と子育ての両立に悩み苦しみ、生活困窮に追い込まれていきます。貧乏家庭に生まれた子どもは同じような貧乏生活に陥る、という貧困連鎖が指摘されています。年金生活で悠々自適の老後を送っているはずの高齢者にも、下流老人という名の低所得層の存在がくっきりしてきました。月6万円余の国民年金だけでは食うだけで精いっぱい、エアコンも使えないからと熱中症で倒れる人が今夏続出しました。こうした貧困現象の奥には、才能ある者が努力して稼いで高額の収入を得るのは当たり前。この仕組みこそが経済を活性化させる。競争に負けた貧しい者には分け与えればよいというアメリカ流の新資本主義経済があります。アベノミクスもその一支流です。平等か自由か、国家経営の重点をどちらに置くかで国の在り方は異なってきます。現在の民主主義国家では、国家財産をどのように分配するかは最終的に有権者の判断が決めることです。国会デモで安保法制への疑問・反対行動を起こして政治に目覚めた若者たちが、さらに一歩進んで今度は税金の使い方、政策選択にも口をはさみ、貧困絶滅につながるような知恵を発揮してくれるかどうか。若い世代からの新しい風が起きると、もう少し風通しのいい社会にはなりそうな気がしますが、甘いでしょうか。




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