ひと昔前、韓国や中国、東南アジアの国々に旅した若者たちから漏れた声が「近くにコンビニがない!」。近くにあれば便利で24時間開いている、をウリにして1970年代に誕生した小型の食品店舗は、すでに日本では街の風景の一部となっており、21世紀の現代では東アジア、東南アジアの街角にも広がっています。日本国内にある主要9社5万3544店舗での昨年一年間の売り上げは、初めて10兆円の大台を突破しました。かつては小売業の王様だった百貨店業界の売り上げを2008年に抜いて、ここ20年近く消費低迷に悩むスーパーマーケット業界の13兆円台に着々と迫りつつあります。便利さを求める波に乗ったコンビニがますます成長、拡大して小売業界のトップに躍り出る日は近いのでしょうか。


ただ、コンビニも何もせずに売り上げを伸ばしてきたわけではありません。主に若者向けの品ぞろいからスタートしましたが、一人用の分量に小分けする売り方は、やがて高齢者にも受け入れられ、客層が拡大します。他店にないプラーベート・ブランド(PB)の開発競争が始まり、「おにぎり戦争」では、具の種類、包装の仕方、個性的な味の出し方など、激しい企業間の競り合いがコンビニ業界全体の質の向上をもたらしました。続いて店頭で淹れ立てのコーヒーが100円で飲める「コーヒー戦争」が勃発、さらに焼きたてのドーナツも買える、という売り場の質的な向上があったからこそでしょう。「ぜひ欲しい」ものだけでなく、「あったらいいな」という消費者の需要・欲望を先取りする、いわばかゆいところに手が届く日本人のセンスが成長を促してきました。きめの細かい品揃いは東南アジアでは、カッコイイ「ジャパニーズ・クール」の一つに思われています。


そんなコンビニが、いま第3の進化・深化に向けて変わり始めています。店舗がサナギから蝶へ脱皮するイメージでしょうか。単にモノを売って儲ける今までの店舗の形でなく、客が店内で買った食べ物飲み物をそのまま店内のスペースで食べられ飲めるように変える。テイクアウト(持ち帰り)に対するイートイン(店内飲食)ができるように、コンビニ各社は既存店を改装し、新規出店の大半を「買って食べられる店舗」にする方針です。食べ物もおにぎりやドーナツといった簡単なものだけではなく、肉や魚や野菜を料理した豊富なおかず類、調理済み食品が登場しています。この背景には、外食と内食との中間に当たる中食(なかしょく)需要が増えているという事情があります。総菜を店で買って自宅で一人で食べる“わびしい食卓”風景。以前は一人暮らしの大学生に多かったイメージですが、今では働くキャリアウーマン、都会に多い高齢者も急増中です。店内で人の雰囲気を感じながら食べられれば、個食・孤食の寂しさも味わなくて済む。家族の形の変容、社会構造の激変の一断面が見えるようです。大型スーパーも負けじと、豊富な飲食の品揃えをいかして、例えば店内で買ったワインや生ハムを店内のシャレたカウンターでそのまま食べられる、といった店舗改装を進めています。ママ友たちが、店で買った食べ物を店内スペースで子どもと一緒に食べるランチ会も増えているようです。コンビニ、スーパーが単なる「物の売り場」から地域住民の「癒しの場」、集会所や公園といった「安らぎの場」へと変身中です。便利さを超えた先に何が見えてくるのか。変わりゆくコンビニは日本社会を映す鏡のような存在です。




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