今年も一年を振り返る時期となりました。新聞は回顧記事を掲載し、テレビは事件事故のまとめ番組を組み、雑誌は早くも来年はどういう年になるかの特集をしています。その大半が驚きと不安の混じった調子で、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が当選したことをトップニュースに据えています。「イスラム教徒はアメリカから出ていけ」「日本防衛には金がかかるから、日本自身が核武装すればいい」「輸入関税を高くして、アメリカ国内に生産現場を戻して仕事を増やすなど政策はアメリカ第一でいく」……と選挙中の勇ましい放言・暴言の類が、来年1月の就任を目の前にして単なる法螺吹きと放置できない段階になりました。1945年の第二次世界大戦終了以降の世界秩序が激変すると危惧する人たちが世界中に拡散しています。


200を超える国・地域が今どういう秩序で成り立っているのか、力関係に変化のうねりがあるのか。世界秩序という言葉は、日ごろ家族や友人間の会話に出てくることはありません。東アジアの盟主を目指して軍事力で海外進出した明治維新後の日本が、敗戦後その反省から一気に内向きになり、一般国民が国際情報への関心を弱めたのも理解できなくはありません。その間、軍事力保持を否定した憲法の下、ひたすら経済成長第一主義で復興を果たし1980年代にはアメリカに次ぐ世界第2のGNP大国にのし上がりました。その半面、国際社会の中で大きな政治的な発言力を発揮するまでには至らず政治小国であり続けました。それで済んできたのは2大超大国だった米ソが民主主義勢力と社会主義勢力とに世界を二分、アメリカと同盟を組んできた日本はアメリカ頼みでよかったからです。ところが1989年のソ連崩壊、1990年代からの中国の経済発展という世界の構造の大転換が起こり日本自身がこれからどういう世界秩序を望みそのためにどう政治力を発揮していかねばならないか今まさしく正念場を迎えているところです。


今年、民主主義国側でも大転換が起こりました。イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ次期大統領決定という事態です。戦後長く続いた国際協調路線から自国利益重視路線への転換を象徴しています。ここ四半世紀、ヒト・カネ・モノが国境を超えるグローバル時代が喧伝されましたが、その反動か「自分さえよけりゃいい」という気分が、地球全体を覆いかけています。唯一の超大国として世界の警察官役を果たしてきたアメリカも「そんな金ないよ。自分のことは自己責任でやって」と言わんばかりの新政権になりそうです。特に政治経験のまったくない不動産家のトランプ氏は自国に得か損かという判断を優先しています。自由と民主主義という灯りを手に、国際社会で正義と理想を実現しようとしてきた世界の伝道師の役割を終えるのか。難民の受け入れはもうたくさんという空気が欧米各地で広まっており、世界中が「自分さえよけりゃいい」と内向きになっています。さあ、日本はどうする?鎖国により自国一国で生存した歴史を持つ日本も、今では外国との友好関係がないと存続できない国家体質になっています。インターネットが瞬時に世界をつなぐ時代に、文化・芸術という得意のソフトパワーを駆使して国際社会で大きな発言力を発揮しながら、戦いのない世界秩序をどう築き上げていくか。年の終わりに私たち「日本丸」の進む方向はどうあるべきか、国の針路を今まで以上に真剣に考える人が今年は増えるのではないでしょうか。それがトランプさんからの有難い?クリスマスプレゼントかもしれません。




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