新聞、それもスポーツ紙を含めて、6月27日のほぼすべての朝刊一面に同じニュースが大々的に載っていました。将棋の藤井聡太四段(14)が前人未到の公式戦29連勝!という快挙を伝える記事でした。昨年10月に中学2年生、14歳2カ月という史上最年少でプロ棋士になった時もニュースになりましたが、誰もがプロデビュー以来負け知らずでまさかここまで勝ち続けるとは予想もしなかったでしょう。将棋界の頂点に立つ名人が人工知能(AI)に負けて将棋人気の下降が心配される今日、この天才少年の出現は、一挙に社会全般に響く明るい話題となりました。「元気をもらいましたよ」。テレビの街頭インタビューに答える高齢者の笑顔が象徴的な一コマでした。


どこにでもいそうな普通の中学生の姿かたちと、もの静かな口調で「僥倖です」などと謙虚に語る大人ぶりとのギャップに、多くの人の関心が寄せられています。世の親たちにとっては「どうして、あんなしっかりした子供に育ったのか」が知りたいところ。5歳のとき祖母からプレゼントされた将棋玩具に夢中になり、地元・愛知県瀬戸市の将棋教室に通い始め、めきめきと実力を上げていったというストーリー。その強さの秘密を多くの人が分析、推測する中で、3歳で入園した幼稚園でのモンテッソーリ教育にあるとする記事が興味を引きました。0〜6歳の間が感覚や運動や言語を身に付けるのに大事な時期として、子どもたちの感情や自主性を重んじて、独自の教材を使いながら、その子のやりたいことを後押しするという教育法。オバマ前米大統領やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らもこの教育を受けたとか。「これをやりなさい」と大人が命令するのではなく、子供が興味を持ちそうなものをいくつか目の前に並べて、本人が好きになったものを飽きるまでやらせる。昔風に言うと「好きこそものの上手なれ」ということでしょうか。将棋を知らない両親は熱中する我が子を離れてじっと見守るだけ。でもそれがかえって子どもの集中力と忍耐力の養成につながったのかもしれません。将棋であれ何であれ、本人が やりたい!と熱望する何かを幼少期につかめば、あとは努力とやる気という自身の内から湧いてくるエネルギーが導いていく。その子の才能の芽を見いだして、そっと支える、そこまでが親と教師の務め、というのがこの教育学の定説です。


さて、どんな時代にも天才少年・少女は現れるものですが、このところの日本ではいろいろな分野で世界的な活躍を見せる10代の少年少女が目立ちます。藤井四段と同じく「スーパー中学生」と称される卓球の張本 智和選手(14)は、6月の世界卓球個人戦で最年少ベスト8入りという大躍進。日本室内選手権の女子3b板飛び込みで優勝した金戸凛選手(13)。U20ナショナルチームに飛び級で入ったサッカーの久保建英 選手(16)は10歳の時からスペインの強豪・バルセロナの下部組織に入団して武者修行。さらに10代後半を見渡すと、競泳の池江璃花子(17)、卓球の平野美宇(17)伊藤美誠(16)早田ひな(17)といった高2グループだけでなく、名だたる先輩ランナーを抜き去って陸上日本選手権100b、200bで2冠に輝いたサニブラウンA・ハキーム(18)など、世界クラスの選手たちがどっと登場してきました。何か共通の特徴があるのでしょうか。幼少期から好きなもの、熱中・没頭できるものを見つけ、その芽を伸ばそうとする親や指導者に恵まれたという点とともに、はじめから「日本一より世界一」を目指す意識でやってきた環境も大きかったでしょう。夢と希望にあふれた1960年代に流行した昭和歌謡が「美しい十代」でしたが、厳しい競争にさらされる21世紀グローバル時代を勝ち抜く青少年には「逞しい十代」という称号を与えたくなりますね。




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