東京の六本木と聞くと、時代の先端というか、カッコいいような、とんがったような物や人が存在している、そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。新宿や銀座とはまた異なった、非日常(ハレ)の祝祭的雰囲気の濃い街と言えるか。そんな六本木にある二つの美術館「森美術館」と「国立新美術館」が共同で、今の時代を感じさせる美術展を開催中です。「サンシャワー:東南アジアの現代美術展〜1980年代から現代まで」。今年設立50周年を迎えたASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国のアーティスト86組が参加、合計190点に及ぶ作品が並ぶ「これまでで最大規模の美術展」だそうです(10月23日まで)。EU(欧州連合)やNAFTA(北米自由貿易協定)など世界の地域経済統合体の中でも、人口6億6400万人という最大の市場規模を誇り、しかも平均年齢は20代から30代と若く人口も増加中。加盟国の半数以上が5%を超える経済成長率を続けており、10年後には日本と肩を並べる経済力をつけると予測されています。


とはいえ、日本人にとっては「アセアンってどんな地域?」という人がまだ多いでしょう。海外旅行先としては、タイ、インドネシア、べトナム、フィリピン、カンボジアなど日本人には人気の国々ですが、そこに生きる人たちがどんな歴史を経て、どんな伝統を背負って、今どんな気持ちで生活して、どんな感情や思いをアートに昇華させているかを知る人は少ないと思われます。でも、そんなに肩ひじ張って行くことはありません。会場に一歩入れば、5000個もの風鈴がぶら下がる空間から絶え間なくいろいろな音が鳴り響き、この美術展のタイトル「サンシャワー=天気雨」という熱帯特有の晴れながら雨が降るという天気を象徴していて、理屈抜きに楽しめます。床一面に敷き詰められた色とりどりの5トンの糸束の中に入っていく鑑賞者参加型の作品も。どこかに金のネックレスが隠されていて、見つけた鑑賞者は持ち帰ることができるそうです。楽し気に探す人たちの姿が物欲に突き動かされる人間を風刺するのか、希望に向かって一所懸命な人間の健全さを表現するのか、興味深い インスタレーションです。もちろん、先ほど触れたようにこれらアジア諸国は辛い歴史を持っています。タイを除く国々は欧米列強の植民地支配を受けており、第二次大戦中に日本軍の占領を経験し、戦後は独立戦争、内戦、クーデター、民主化闘争など苦難の歴史を刻んでいます。そんな暗い日々を表現したアート作品も多く、思わず襟を正すような気分になります。


インバウンド景気に沸く日本は今年も訪日外国人観光客が前年を上回り、過去最高の年間3000万人に届きそうな勢いです。東南アジアからのお客さんも増えています。これらの国々は当分高い経済成長率が続くとみられ、旺盛な経済力という土台があると絢爛たる文化芸術の花が開くという現象は、古今東西の歴史が証明するところです。今後、10カ国のアート作品がますます高度化して世界の目を引く日も遠くないでしょう。言葉も文化も異なる民族同士が同じ国や地域の中で共存する、多民族融合の哲学やルールに基づいた作品です。とかく画一性・純粋性を追求しがちな日本人にとっては学ぶべき内容が多いはず。 今、地球上のあちこちで「自国優先主義」 「○○ファースト」の思想が勢いを強める中で、政治・経済の課題を平和・寛容的な手段で解決していこう、 ゆる〜く繋がり結束していこうという捉え方は、21世紀の国際社会には有効なものになるでしょう。GDPという経済指標だけで国力を判別する見方で東南アジアを眺める時代はもう終わり。東南アジアのいいとこ取りをしながら、日本との絆を太くしていきたい。現代アートは、その橋渡しの第一歩です。




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