寒さが身にしむ晩秋から初冬へ。街ではマスク姿が目立つ季節になりました。風邪、インフルエンザの流行が心配です。そういえば、新型インフルエンザが猛威を振るった2009年には日本の至る所で白いマスクをした老若男女の姿が見られ、外国人観光客の目には極めて異様な光景に映ったそうです。道路をバイクが埋め尽くすベトナムでは、運転する男女の大半が排気ガスを吸わないために色とりどりのマスクをしているのとは対照的に、日本人は皆一様に白マスク。見慣れた日本人には日常風景でも、初めて訪れた異文化の人には白マスク集団を見て「街じゅうが患者だらけ?」と感じられたのかもしれません。


この白マスク姿。お気づきでしょうか、ここ3〜4年前からやたら増殖してきました。街なかはもちろん、学校で、職場で、家庭内で。しかも、風邪の冬や花粉症の春だけでなく、今や季節に関係なく一年中マスクを手放せない人がいます。特に女性に多く見られ「スッピンを見られたくない」、「フェイスラインを隠して小顔に見せたい」などファッション目的の若い女性だけでなく「シミや皺、ほうれい線を隠せるから」という高齢女性も最近目立ちます。これはこれで、まあほほえましいと言えますが、問題は「人から話しかけられたくないから」という理由でマスクをする人が増えていることです。精神カウンセラーによると、これは10代から30代の女性に多いようで「素の自分に自信がない」、「他人からどう見られているか気になって仕方がない」、「仲間の前で自分の表情・感情を出して人間関係で傷つきたくない」といった内向的な理由だそうです。白マスクは、やんわりとコミュニケーションを拒否しているサインなんですね。


すでに、伊達メガネならぬ「伊達マスク症候群」として「実用日本語表現辞典」にも載っています。「人と話したくない、人に顔を見られたくないなどの消極的な理由から、病気にかかっていないのにマスクを着用する性行を意味する俗語。特に若い世代に多く見られる」と記述されています。女性誌にも「マスク依存症」の実例がさまざま紹介されています。若い世代はSNSなどネットで匿名のチャットなら楽しめるけど、年長者や少し距離を置く人と面と面を合わせての直接会話は苦手。たわいない雑談でもかなりのプレッシャーになる。ならば「話しかけられないようにマスクで“口封じ”しておこう」という自己防衛策に出た、そんなところでしょうか。「仕事中も寝る時もマスクを付け続けて3年。付けてないと不安で落ち着かない。もう手放せません」という30代の女性の声も紹介されています。神経内科クリニックの専門家は「まわりの空気を読んで、周囲に合わせるように作り笑いや同調のうなずきをするのに疲れた人たちが、社会を拒絶する手段としてマスクをつける。まわりと違っていてもいいんだ、ありのままの自分でいいと思えるようになってきたら、だんだんとマスク離れできるでしょう」と説く。どうやら、マスク依存症は日本社会の病のようですね。いや、他人との対話を拒絶するという病は日本にとどまらず、今や世界のあちこちで見られる現象のようです。異質な文化と付き合わないという、アメリカのトランプ大統領に代表される「壁」作りは、地球全体にマスクをつけているようなものと言えます。若者のマスク症候群も他人とのコミュニケーションに対する壁です。世界平和のための第一歩になるかどうかは分かりませんが、若者たちよ、まず自分で克服できる身近な壁、マスクを外して、目の前の人と話をするところから始めてみませんか。




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