スキー・アルペン競技5種目(座位)に出場した村岡桃佳さん(21)が、金1個、銀2個、銅2個と一人で合計5個のメダルを獲得し、日本チームとしても前回ソチ大会の6個を上回るメダル10個を記録した平昌冬季パラリンピックは、予想外の盛り上がりを見せました。NHKなどのテレビ中継やニュース報道は過去最長時間となり、視聴率も最高を記録するなど、パラスポーツへの関心が高まったことは間違いありません。次はいよいよ2020年東京大会。今回の話題沸騰を追い風にして、東京パラリンピックの成功につなげていきたいものです。当初は、第二次大戦後に負傷兵のリハビリのための運動という福祉の観点から始まった障害者スポーツも、次第に多種多様な障害者が生きがいとして楽しむスポーツという位置付けに代わり、さらに今ではトップアスリートたちが頂点を競うスポーツとして注目されるようになりました。


しかし現実には、障害者スポーツにはまだいくつもの壁があります。練習場や試合会場が少ない、移動手段や宿舎が限られている、ボランティアなど支えてくれる人が少ない、義足など競技補助具がオーダーメイドのため高価で手に入りにくい…と課題が山積しています。ただ、年々環境は良くなりつつあるのも事実です。競技用義足の研究・開発に取り組むベンチャー企業「サイボーグ」は、競技用義足24本を常時貸し出すギソクの図書館を東京・豊洲に最近オープン。子どもから大人まで1回500円で利用でき、敷地内の60b6レーンの陸上トラックを自由に走れるようにしました。米・マサチューセッツ工科大学で7年間スポーツ工学を学んだ遠藤謙社長は「スポーツの中で走ることが一番敷居が低い。もっといい義足を開発して、学校の体育の授業で見学している義足の子どもたちを走らせたい。健常者より速く走る逆転劇を演出できたら」と遠くない将来を見据えています。スポーツウエアの開発でも、障害者用は手つかずの状態が続いていましたが、最近は開発が盛んです。平昌パラリンピックの日本選手のウエアを担当したゴールドウインによると、寒冷地で長い時間待機せざるを得ないパラアスリートのために保温性の高い素材を使ったり、リオ五輪で有名になったボッチャ競技用には投げる際に腕回りがよくなるようテニスウエアの伸縮性の高い素材を肩回りに採用したりするなど、ウエア改革が進行中とのことです。


障害者向けの商品は健常者用に比べて需要が少なく、ビジネスになりにくいという問題を踏まえ、障害者向け商品の開発で培ったノウハウを高齢者用に活かそうという動きも出てきています。障害者用に開発したスポーツウエアを高齢者用としても活用できるのではないかという捉え方もあるでしょう。障害者の移動に関わってきた近畿日本ツーリストやクラブツーリズムの担当者に聞くと、長年の経験が高齢者の旅行商品開発のヒントになったそうです。全盲の人がポツリと言った「一度でいいからクルマを運転したい」という言葉をヒントにして、専門家が講習した後で実際にサーキット場に行ってハンドルを握って運転してもらうというツアーは、今や予約待ちの人気商品に育ったとか。旅行先をあまり歩かない人でも楽しめる高齢者ツアーも開発されました。身体の状態や年齢に関係なく、誰でも旅を楽しめる社会の実現に向けて知恵を絞っているようです。体の一部が不自由でも、若い時ほど動かなくなっても、何らかのスポーツをして人生をいきいきと過ごしたい。そんな人が今、この日本に、いや世界あちこちに増えています。地球丸ごと高齢社会となりそうな21世紀。パラスポーツは障害者だけのものではない、ということがだんだん見えてきました。




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