4年に1度の世界的なスポーツ大会というと、日本人の多くが「オリンピック!」と答えます。ところが、ヨーロッパや南米では違います。FIFA(国際サッカー連盟)主催のワールドカップ大会の方が、より熱い注目を浴びるスポーツイベントなのです。2016年リオデジャネイロ五輪の参加国・地域は206カ国にのぼりましたが、それよりも多い211の国・地域が加盟するFIFAの方がすそ野が広く、「武器を持たないピッチ上の戦争」と形容されるほど、国と国の威信をかけた激しい戦いが繰り広げられます。その第21回大会が6月14日(日本時間では15日)から7月15日まで、ロシア各地の11都市で、世界各地域予選を勝ち抜いた32チームが参加して全部で64試合が行われます。1998年フランス大会以来連続出場を果たしてきた日本も今回6回目の出場です。今まで果たせなかったベスト8進出への期待がかかります。


とはいえ、世界の壁は厚く、前回ブラジル大会では0勝2敗1分の惨敗で予選リーグを突破することさえできませんでした。今回も4カ国ごとに分かれた予選リーグHグループでは南米・コロンビア戦(6月19日21時)、アフリカ・セネガル戦(6月24日24時)、ヨーロッパ・ポーランド戦(6月28日23時)と、いずれもFIFAランキングで大きく日本を上回っている強豪国が相手です。しかも3年近く日本チームを率いてきたハリルホリッジ監督を4月に解任して日本人の西野朗氏に指揮権をゆだねるという大会直前のごたごた騒ぎに、サポーターの間には不安が広がっているようです。長い間、日本チームの弱点は得点力の低さ、決定力不足、1対1での弱さと指摘されてきました。ハリルホリッジ前監督はそれを矯正しないと強豪チームと渡り合えないと「デュアルの力」、1対1になった時に相手に負けない個々の選手力のアップを目指したものの、結果的にうまくいきませんでした。選手個々の努力不足なのか、その戦略そのものが日本人選手に向いていなかったのか、議論の分かれるところです。


オリンピック以上に地球上を熱くするワールドカップ。それはひとえに試合の興奮を生中継するテレビ中継にかかっています。日本で初めてテレビ中継が行われたのは1970年メキシコ大会で、テレビ東京(当時は東京12チャンネル)が8000万円の放送権料でFIFAと契約。その後1978〜98年の大会ではNHKが各6億円で契約。日韓大会の2002年には一気に跳ね上がり、NHKと民放局が一緒になったジャパン・コンソーシアム(JC)として60億円で契約。その後も上昇し続けて、今回のロシア大会では前回の1・5倍となる600億円の放送権料となりました。テレビだけでなく近年ネットメディアの中継も増えて、ますますワールドカップは巨大ビジネス化し、開催国選定などに絡んでFIFA幹部役員たちの利権汚職が摘発されています。もう一つ、大きな問題があります。開催国が競技会場を新たに建設しますが、祭りの後、つまり大会終了後にその施設が有効に使われないまま巨額の維持・管理費がかかるお荷物となり、地元自治体や国を重い財政負担で苦しめているという現実です。2010年大会の南アフリカ、2014年大会のブラジルがいい例です。私たちには目前に迫った東京オリンピックがあります。私たちの税金がどう使われるべきか。試合の興奮に身を投じる一方で、巨大スポーツイベントの在り方と自分との関わり方について冷静に思いを巡らすいい機会でもあります。ホットハートとクールヘッドを併せ持つのは、日本のワールドカップ優勝以上に難しいことかもしれませんが。




株式会社メディカルメイツ