心疾患や認知症や肥満のリスクが高くて、たばこを1日15本吸うのと同じくらい健康に良くないことって、な〜に? さて、答えはいかがですか。「それは孤独」というのがイギリス政府の答えです。メイ首相も言っています。「孤独は現代生活の哀しい現実。独居老人や介護を必要とする人、愛する人を失った人など、予期せぬ孤独な生活に陥ってしまった人々に対して、国として行動を起こす」と宣言して、1年前に政府の中に「孤独担当大臣」という新しいポストを作りました。高齢者や障害者だけでなく若い世代にも孤独による肉体的、精神的な健康被害が著しく出ていて、試算すると国民経済に1年間でマイナス5兆円相当の損害を与えているというのです。孤独を個人の心の問題としてではなく社会的な病ととらえて、官民ともに協力し合って孤独を減らしていこうという国家戦略です。個人主義の国イギリスには、一人になって悩み苦しむ人が多いのか。そういえば、ビートルズの曲に「♪ああ、すべての孤独な人々を見よ」という歌い出しの「エリナー・リグビー」がありましたね。


なんだ、他国のことかと言っていられない数字があります。OECD(経済協力開発機構)加盟21カ国の中で「友達や同僚と過ごす時間があまりない」と答えた男性の割合は、なんと日本がトップだったのです。女性についても2位という結果が出て「世界で最も孤独な国」という一面が浮き彫りにされました。最近『世界一孤独な日本のオジサン』(岡本純子著)、『男性という孤独な存在』(橘木俊詔著)、さらに「みんな、本当の孤独を知らないだろ?」というキャッチコピー付きのビートたけし著『「さみしさ」の研究』など“孤独本”が相次いで出版されました。定年後、パートナーを亡くし、地域社会にも溶け込めずにいる男たちが孤独に打ち沈んでいる様が描かれています。「男はサムライのように孤高に生きるものだ」という美学も結構ですが、年間約3万件という孤独死の多さには思わずぞくっとします。家族や職場以外の人間関係が希薄だという日本社会。生涯未婚者や非正規労働者の増加傾向が続くと、ますます「孤独が国民病」という事態が深刻になります。もっとも、アメリカの研究者によると、今のアメリカ人も4割が孤独を感じており、1980年代の2倍にもなっているとか。SNSなど他人とすぐ繋がるツールが発達した今の方が、むしろ孤独感が増し、伝染するもののようです。すでに孤独は21世紀の文明病ともいわれる事態になっています。


前出のイギリスでは、昨秋からユニークな対策を実施し始めました。24時間いつでも電話で話せる「シルバーライン」、コーヒーショップに設けた「おしゃべりしたい人用のテーブル」、路地に多くのテーブルを並べて一緒に食べる「ビッグランチ」、多くが集まってプレーする「歩くサッカー」…社会の中に繋がりを増やして、人々の生きがいを取り戻そうという試みです。以上のように話を進めてくると、孤独とは悪いもの、避けるべきものという印象となりますが、さてどんなものか。「そもそも人間の存在そのものが孤独なのだ」という哲学者も少なくありません。「孤独は知恵の最善の乳母である」と肯定的にとらえるドイツの哲学者がいれば、最近では「他人にまねのできないイノベーションを創造するのは、若い時に孤独だった人である」というアメリカの経営学者もいます。瞑想によって自分自身の存在を深く考えることで、大自然や宇宙との繋がりを感じて、想像力と創造性があふれてくる。そんな強い孤独だったらいいのですが。パソコン、インターネット、スマホという世界中の他人とすぐ繋がる電子機器が生まれた時代に孤独の闇の色が余計濃くなるというパラドックスに、私たちはどう対処していけばいいのか。大きな課題を抱えながら「孤独に」生きていくしかありませんかねえ。




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