「ああ、これでまた旅の楽しみが一つ減りますねえ」という声が聞こえてきそうです。3月16日のダイヤ改正を機に、JR4社が新幹線や特急列車の車内販売をやめることにしたからです。鉄道による旅の魅力は、移り行く車窓からの景色を眺めながら、車内でお弁当を食べたりお酒を飲んだりしながら、家族や気心の置けない友ととりとめのない話をする…そんなゆったりした時間を味わうことでしょう。東海道新幹線、山陽新幹線、北陸新幹線は今まで通りのサービスは続けますが、3月15日を最後に姿を消すのはJR北海道の新幹線と特急スーパー北斗、JR四国の特急しおかぜ(丸亀―観音寺)、特急南風(丸亀―琴平)、JR九州の新幹線、さらにJR東日本も東北・北海道新幹線はやぶさ・はやて(東京―新函館)、東北新幹線やまびこ、秋田新幹線こまち(盛岡―秋田)のほか、特急踊り子、日光、きぬがわなどが終了します。弁当類の販売をやめて飲料と菓子とつまみだけの販売を続けるのは東北新幹線はやぶさ・はやて(東京―新青森)、山形新幹線つばさ、秋田新幹線こまち(東京―盛岡)、上越新幹線とき、特急あずさ、かいじ、ひたちなどです。


理由ははっきりしています。売れなくなったからです。乗車前に、値段の安いコンビニで買って乗車する人が増え、東京駅のように100店舗近くもある「エキナカ」の食料品店が充実して、全国各地の名産が容易に手に入るようになったことも影響しています。車内販売の売り上げのピークは2000年ごろで、今回取りやめるところはすでにピークの半分ほどに落ち込む赤字続きだそうです。もう一つの理由は、人手不足で販売員の確保が難しくなったからです。狭い列車通路で揺られながら、たくさんの食べ物が積み込まれたワゴン車を押していく仕事は、確かにそんなに楽ではなさそうですね。もっとも、一日平均47万人が利用するJR東海の東海道新幹線だけは一番の稼ぎ頭で、パーサーと呼ばれる販売員も760人と最多を誇り、緊急時の避難誘導などの仕事も託されているとか。


以前は新幹線に食堂車があり、テーブルで食事をしながら旅をするという形が珍しくなかったのですが、鉄道のスピードアップにつれて、旅情を楽しむよりも、早く目的地に到着することが目的となり、20世紀終盤に姿を消しました。その半面、JR九州の成功からここ数年、何万円〜何十万円もする豪華列車によるグルメ旅が人気を博し、旅の両極化が進んできました。では、日常路線から車内販売はこのまま消えてしまうのかというと、どっこい、頑張っている私鉄路線があります。海外からのインバウンド人気で外国人観光客が激増している富士山周辺を走る富士急では、富士山をモチーフにしたグッズ類を80種類も取りそろえて攻勢をかけています。また、老舗の小田急ロマンスカーは70年前から車内販売を続けており、人気の新宿―箱根路線で定着したといっていいでしょう。さて、2027年開業予定のリニア新幹線では、品川―名古屋を30分で結ぶ超高速路線なので、お弁当をゆっくりと楽しむ余裕なんかなさそうですね。




株式会社メディカルメイツ