この夏は何かとアニメが話題になりました。4〜9月の毎朝放送されているNHKの連続ドラマ「なつぞら」が、女性アニメーターの草分けといわれる奥山玲子さんをモデルにしたストーリーです。アニメ映画の制作現場が舞台となり、作画、動画、キャラクター、色付けなどの言葉が飛び交って、すべて手書きだった日本アニメ草創期を生き生きと描いています。そこから高畑勲、宮崎駿らが出てきて、「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品群が世界で受け入れられ、アニメが日本を代表する文化の一つに至りました。そうした評価の高い日本アニメの中でも「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん!」などの人気作品を連発して人気と評価を不動のものにしたのがアニメ制作会社京都アニメーションです。その京都市伏見区のスタジオが7月放火され、35人もの犠牲者が出た事件は多くのファンの悲しみを集めました。アジアをはじめ世界の国々から悼む声が寄せられ、会社が設けた支援専用窓口には8月23日までに約20億円もの寄付金が寄せられたそうです。作品の力がいかに偉大だったか、若者への影響力がいかに広く深かったかが改めて証明された思いです。


うれしい話もあります。新海誠監督の最新アニメ映画「天気の子」が、7月19日の劇場公開からわずか34日間で750万人を動員、興行収入100億円を超える大ヒットを飛ばしたというニュースです。新海監督は3年前のアニメ映画「君の名は。」で興行収入250億円を記録。歴代日本映画興行収入ランキングで1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)に次ぐ2位という快挙を果たしたばかりです。また来年の米アカデミー賞「国際長編映画賞部門」への日本からの出品作に決まったとの朗報も続きました。京アニの悲劇をアカデミー賞受賞というビッグニュースで包み込んでほしいと願うファンも多いことでしょう。


「君の名は。」と同様「天気の子」の主人公は10代の男女です。離島から高校1年の少年が家出して上京、そこで私が祈ると天気を晴れに変えられるという超能力?を持つ少女と出会ってから、さあドラマは意外な結末へと進んでいく……。実際に存在する都市や町の風景を緻密な描写と美しい色彩で表現するのが新海アニメの特徴で、登場人物が交わす繊細な言葉と、心情を織り込んだ劇中曲とのハーモニーが、日常世界から観客を少しファンタジーの世界にいざなう、そんなところが魅力であり、人気の秘密なのでしょう。もう一つ、隠し味がありました。なんと、それは「万葉集」。自身も大学で国文学を専攻し、制作した7つのアニメ作品のベースに、「万葉集」で一番多く収録されている相聞歌、男と女の恋愛エッセンスがちりばめられていることを認めています。露骨な愛の告白ではなく、そこはかとない表現で熱い恋心を相手の胸に伝えようとした古代の女心・男心が、今の若い人たちの琴線に触れるのでしょうか。映画大ヒット現象こそ、新海ワールドが今を生きる若者のハートをとらえている証拠でしょう。映画評論家の中には日本アニメの歴史をこう表現する人がいます。昭和を代表するのは手塚治虫、平成は宮崎駿、そして令和は新海誠だと。そういえば、令和という元号の出典は「万葉集」でしたねえ。




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