IT企業ZOZOを立ち上げて巨万の富を持つ前澤友作氏が昨年末、台風被害で苦しむ千葉県館山市に20億円寄付した、というニュースが話題になりました。同県鎌ケ谷市出身の前澤氏は日ごろから「千葉愛」を公言しており、これまでにも同県内のさまざまな市や施設に寄付をしてきたそうですから、一過性の売名行為という非難は当たらないでしょう。むしろIT企業創業者であるマイクロソフトのビル・ゲイツ氏やフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏らによる、慈善事業への巨額な寄付行為をまねた形といえるかもしれません。ビル・ゲイツによる寄付は、自らの財団を通して、世界の貧困と病気をなくすためという高邁な理想を掲げて、何千億円もの巨費を投じる世界最大級の慈善活動です。その精神の底流には、汝(なんじ)の持てるものを貧しきものに分かち与えよというキリスト教の教えがあるのでしょう。


では日本の寄付行為にはどんな伝統があるのでしょうか。思い出すのは2010年の年の瀬に、「タイガーマスク・伊達直人」名義で、群馬県の児童養護施設にランドセル10個が送られてきた出来事をきっかけに、全国各地で匿名による寄付が相次いだ「タイガーマスク現象」です。なぜ匿名なのか。陰徳あるものに陽報ありという言葉が示すように、善意の行為は人にわからぬようにやるもので、そうすればいつか必ず自分にいい恩恵がもたらされるという昔からの仏教、儒教の教えが多くの人の心に染みついて、それが国民性になったのでしょうか。今でもさまざまな慈善団体に寄せられる一般市民からの寄付は、匿名希望が多いそうです。前澤氏のような公表ケースもありますが、超有名なプロ野球界のスターだった人物が名を明かさないという条件で長年多額の寄付を続けているなど、陰徳文化はまだまだ健在のようです。キリスト教社会や、富者は貧者に喜捨する義務があると説くイスラム教社会とも異なる日本の寄付文化ですが、困っている人に何か手助けしたいという気持ちは変わりません。


ただ、今の世の中、困っている人や弱い立場にいる人が増えている印象が強くなっています。どこの誰に与えたらいいのか。あてもなく寄付金を投げるよりも、自分が強く援助したいと思う人たちに直接お金が届くようにしたい。でもどこにどんな境遇の人たちがいるのか、情報が少なくて自分では判断できない……という人が増えているそうです。横浜市社会福祉協議会が昨年末から、そんな人向けに「寄付と遺贈の相談窓口」を全国に先駆けてオープンしました。困っている人にという漠然とした寄付ではなく、例えば視覚障害者で大学進学を希望している人にとか、中村哲さんの遺志を継ぐ活動になど、ピンポイントで支援できるための情報を提供するのが役目です。また、長寿高齢社会を反映してか、自分の資産を単に親族に相続させるだけでなく、世の中のために役立ててほしいと願う高齢者が年々増加しています。自分が働いて貯めた個人財産を公共のために使ってほしいという、その金額が膨れ上がっていく社会も、悪くないですね。昔の人は言いました、お金はあの世まで持っていけないから。金の儲け方よりも、金の使い方にその人の人格があらわに出る。正月は冥途の道の一里塚、めでたくもありめでたくもなし。どう自分の人生を仕舞うか。おとそ気分の中で、そんなことをぼんやりと考えるのも、こりゃまたおつなものかもしれやせんねえ。




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