14世紀のヨーロッパで黒死病(ペスト)が大流行して、人口の3分の2が失われた。こんな記述を世界史の教科書で読んだ人も多いでしょう。今で言うパンデミック、感染症の世界的流行のことです。とはいえ、予防法も治療法も薬剤も格段に進歩した21世紀の現代社会で、そんな悪夢が現実になることはない、と思い込んでいる人もいるでしょうね。ただ、地球上の歴史をちょっと振り返っただけでも、古代から中世を経て近世にかけて、ペストだけでなく、コレラ、天然痘、結核、インフルエンザ、梅毒、発疹チフス、マラリア、エイズ・・・と数多くの感染疾病に人類が襲われた過去が見えてきます。21世紀に入ってからでも、2002年から03年にかけて、香港を中心に37カ国8000人以上が感染、774人が死亡したサーズ(SARS)騒ぎは、まだ記憶から消えていません。とかく対岸の火事と思っている日本人も、この1月からの新型コロナウイルスのまん延は深刻になっています。国難という表現も、あながち大げさでなくなってきている情勢です。


国内での感染も徐々に広がり、2月27日には安倍首相による全国の小中高校の一斉休校、イベントなどの自粛・中止要請が唐突に発せられ、いきなり日本列島に緊張感が高まりました。ミュージカル、歌舞伎、ライブ、芝居といった文化芸能活動のみならず、サッカー、ラグビーの試合中止・延期、大相撲無観客興行などスポーツ界にも影響が及んでいます。一生の思い出になる卒業式がなくなった子どもたちの悲しみ。友だちと一緒にディズニーランドに行く予定だった若者たちの嘆き。子どもの世話で仕事を休まざるを得なくなった母親たちの苦悩。外出自粛ムードによるレストランやデパートの営業不振。老若男女、一般市民の日常生活にこれほどまでに深く大きな影響を及ぼす非常事態は、戦後あまり経験してこなかったものでしょう。命あってのものと、自衛予防しつつ、嵐の過ぎるのを待つしかないのでしょう。


中国発の今回の感染は、2カ月で世界5大陸にまで広がり、60カ国を超えるパンデミック状態になりました。ヒト・モノ・カネ・サービスが国境を容易に超えるグローバル経済時代を反映した事態といえるでしょう。もう一つ、21世紀特有の事情が加わります。インターネット、SNSによる情報伝達が瞬時に地球上を巡るという時代です。パニック時に特有のウワサ、デマ、今風なフェイクニュースもたくさん出回ったようですが、それ以上に正確で役に立つ情報が的確に手に入る社会になっています。不幸にしてウイルスがまん延した国々では、治療法が確立していない現状で何とかベストな対策をとろうと、有用な情報を交換・共有しながら患者ファースト、国民の命・健康ファーストの姿勢で臨んでいるようです。政治や経済で日ごろ争っている政府間でとにかく命を守ろうと協力し合う傾向がでてきています。今回の新型コロナウイルスの唯一評価すべきは、アメリカファーストを声高にわめくトランプ米大統領の影響で、世界中に広まった自分さえよければいいという“悪ウイルス”を、少し抑制する効果をもたらしたことかもしれません。もう一歩先、地球環境ファースト、さらに平和ファーストに向けても、何かできそうな気がしますけど。




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