異常な長雨続きと50年に一度という豪雨、洪水に襲われた7月の日本列島は、記録的な日照不足でした。その分、8月に入ると太陽が倍返しとばかり、連日の猛暑に見舞われ、浜松市で日本最高気温タイの41.1度になったのをはじめ、各地で熱中症によって死亡する人が多くなっています。おまけに今年はコロナ禍でマスクが欠かせないとあって、街ゆく人たちも頭がクラクラするなど、涼を求めるどころか命の危険から逃れるのに懸命でした。高温が生命にとって危険なのは、多くの人が経験している実感でしょう。では、逆に体温が低くなると人間はどうなるのか。直腸温度が摂氏35度以下になると、低体温症で死んでしまうそうです。冬山での凍死などの例は今も絶えません。


一方で、人体を冷やして命を助ける治療もあります。頭部損傷や心肺停止状態の患者の体温を34〜32度に下げて行う救急救命手術です。低温になると、生命反応が少なくなり、代謝が抑制され、症状の進行が遅れます。その時間を有効利用して、今まで助からなかった生命を救おうというわけです。さらに、ここから発想を飛躍させて、いっそのこと、人体を冷凍して仮眠させてしまえば、という「人工冬眠」の研究が20世紀半ばから進められているそうです。最近、筑波大学と理化学研究所の共同研究チームが、マウスの脳神経の一部を刺激して冬眠状態にすることに成功したと発表しました。脳の視床下部にある神経細胞の集まり「Q神経」を薬剤で刺激すると、通常37度の体温が24度前後に下がり、心拍数は約4分の1に減り、動きがなくなり食事もせず、24時間以上も冬眠状態が続いたという。今後、サルでの実験に進み、やがてはヒトにもと夢が広がります。政府支援のこの先端科学研究では2050年までに技術を確立するのが目標です。アメリカでも実験が進んでおり、不眠不休の?開発競争が展開中です。


人間の人工冬眠というと、すでにSF小説ではおなじみのテーマです。宇宙探検に乗り出す飛行士たちが何万光年も離れた惑星や恒星に向かうため、宇宙船内のカプセルで何万年も眠り続ける姿として描かれています。「猿の惑星」や「2001年宇宙の旅」など数多くの映画で見た方も多いでしょう。ただ、実用化を期待しているのは当面、救命救急医療の世界です。代謝を下げてエネルギー消費を抑える効果のある冬眠状態で、脳卒中や心筋梗塞患者に対して、酸素の消費を減らして障害を遅らせることで治療効果が上がる、と期待しています。さらに、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など現在の医療水準では治療が難しい病気を抱える人たちには、効果的な治療法が見つかる未来まで人工冬眠で待つ、という選択肢も見えてきます。それは素敵なことですが、まるで今のエステサロンに通うように、人工冬眠マシーンの店が身近に利用できるなら、老化を遅らせるためにせっせと通う美魔女たちが押し寄せる・・・・・・そんな未来が現実になるのが幸せな世の中なのかどうか、残暑の日々、昼寝しながら考えてみましょうか。




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