お年玉をもらった子どものころの喜びは、大人になっても忘れないものです。今年、それに似た喜びを思い出した人もいたでしょう。コロナ危機のさなか、政府が国民一人一人に一律10万円の「特別定額給付金」を支給したとき、わあ、うれしい超ラッキー!と全国のあちこちで歓声がわいたことでしょう。これは今回限りの臨時的な措置でしたが、では今後もし毎月10万円ずつもらえるとしたら、どんな感情がわいてくるでしょうか。赤ちゃんも100歳以上の高齢者も、高額所得者も無職・失業者も、年齢や収入に関わりなく、政府がすべての国民一人一人に生活に必要な最低限の収入として一定の現金を定期的に配るというのが、現在多くの国で導入論議が起きているベーシックインカムという政策です。


絵空事ではありません。実際に、あなたに今後3年間、1カ月15万円(1200ユーロ分)を無条件で差し上げますという国があります。先進国のドイツです。ベーシックインカム制度導入でどんな影響が現れるのか、来春から社会実験をやる予定です。まず現金給付を受ける120人と受けない1380人を選び、被験者それぞれの生活の質(労働状況、収入、時間の使い方など)や精神面がどう変わるか、比較検討します。すでにアメリカのロサンゼルス市など5市でも試験中で、フィンランドでは3年前に失業者2000人を対象に月額7万円支給という実証実験をしましたが、大きな変化は見られなかったそうです。とはいえ、貧困層には最低限の生活保障がされ、近年世界的に広がっている経済格差の是正に有効という専門家の主張も少なくなく、今年ローマ教皇や国連開発機構が導入を呼びかけたほどです。


貧しい人を助けたいという思いから、これに似た思想・政策は16世紀の欧州から生まれて、今では資本主義擁護派からも社会主義的な勢力からもこの政策の効果的な導入が論議されています。金額や対象範囲など国々によって制度設計が異なりますが、食うに困らない最低保障がなされることで、今以上に働く幅が広がり、貧困から脱出する人が増える給付金に自分の稼ぎを積めば個人消費が増えて景気が良くなる一度失敗しても絶望に陥ることなく人生やり直せる人が出てくるといったメリットが強調されています。もちろん反対論も根強くあり、労働意欲をなくす人間が増えた結果、財源をどうするのかといった声が絶えない。日本の場合、貧困対策では生活保護制度がすでにあるではないかという声が聞こえるが、世間体を気にして申請していない人がたくさんいるといった実態だそうです。今までもこの導入を政策、選挙公約に掲げた政党はありましたが、大きな支持は得られませんでした。ところが、今年の10万円支給がまさにベーシックインカム的政策だったという評価を受けて、今後各政党が日本の実情に合った新たな社会福祉政策として、ベーシックインカムを吟味検討する時期に入ったかもしれません。お年玉をもらった喜びと感謝の心を、日々生きるエネルギーに変える人が日本には多いような気がしますけど、さてどうなりますか。




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