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「日本の家は木と紙でできている」。江戸時代から明治時代にかけて日本に来た西洋人の目に映った日本の家屋は、そんな脆弱な建物だったのでしょう。何度も大地震や大火災、さらには空襲に見舞われて、ほとんどの街が灰燼に帰したのを目の当たりにした今の日本人の心にも、「木造=燃えやすい、壊れやすい」というイメージが焼き付いてしまいました。強靱なコンクリートや鉄骨に比べて、木は古くて時代遅れの建築材と思う人もいます。ところが今、木は最先端の建材になろうとしている、といったら信じられるでしょうか。燃えない、倒れない木材の開発が近年急速に進み、10階を超すような高層ビルの建築も可能になってきました。なんと住友林業は東京・丸の内に、高さ350メートル、70階の木造高層ビルを建てる、と発表しました。2041年の話ですが。


そんな遠い先の話ではなく、2023年に着工2025年完成の計画があります。三井不動産が東京・日本橋の三越本店近くに建てる、地上17階・高さ70メートル、国内最大・最高層となる賃貸オフィスビルです。主に使う木材は竹中工務店が研究開発した耐火集成材「燃エンウッド」で、耐火性・耐震性に優れ、国交省の試験をパスしたものです。「え、木は燃えないの?」という疑問が出てくるでしょう。ここ数年の建材メーカーの開発競争で、スギ、ヒノキ、アカマツといった国産材にモルタル・石膏を巻き込んで断熱・吸熱効果を高めて、燃えても表面だけ焦げて本体は2時間たっても燃え尽きないという高品質を獲得しました。さらに、木と木との接合部に金具を挟む工法、木と鉄とを9対1で使うハイブリッド工法など、強度強化の取り組みが進んでいます。新技術によって柱も梁も床も木目がきれいに見え、木の香りもするようになりました。


この木造高層建築ブームの背景は何か。バブル景気の折から安い輸入材が大量に流入して、日本各地の山林が荒れ放題になったという危機感がありました。戦後すぐ大規模な植林事業が行われ、そのときの木材が今、大量に供給されているという事情があります。コンクリートと鉄の冷たさに飽きたのか、少し住宅にお金を掛ける余裕ができたのか、少しずつ木の良さを取り戻す動きが出てきて、建築家の隈研吾さんが新国立競技場に国産木材を使ったという話題も、この流れを後押ししたかもしれません。今のところ、コストは鉄筋コンクリートより1割以上高めですが、工期が短くて済み人件費が安くなるというメリットがあります。さらに、建設中に排出するCO2など温室ガスがかなり抑制され、木そのものは再生可能なのでSDGsという地球の大きな流れに添っています。英国ロンドンでは高さ300メートルもの木造高層ビルの建設計画があるそうです。元祖木の家の国・日本では、東京スカイツリーの耐震構造のヒントになった五重塔が今も健在で、日本人の知恵の結晶であり、誇りでもあります。これから全国各地に木造高層建物が増えてくると、来日した外国人観光客からは「日本のあちこち五重塔だらけ」といった声があふれるかもしれませんね。




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