社会の激動期には、いろいろな言葉が生まれます。新型コロナウイルスの世界的蔓延が止まらない今、コロナ失業、コロナ太り、コロナうつといった新語がマスメディアで取り上げられており、コロナ移住もあります。都会から田舎に引っ越す人の動きです。コロナ禍によって、会社勤務が制限され、大混雑の通勤列車にもまれて企業のオフィスに行かなくてもいい、自宅でのテレワークでいこうという勤務形態の転換が、働く人々に大きなインパクトを与えています。どんな仕事形態がいいのか、どこで働くのがいいのか、そもそもなぜ働くのか、仕事と人生の関係は?などなど、これまで当たり前だった考え方に大きなひび割れが入り、では自分はこれからどんな人生を送りたいのか、一人ひとりが真剣に模索を始めているところです。


東京一極集中。ここ20年以上の日本の課題を一語で表せば、これに尽きます。裏面には地方の衰退、過疎化、なだれのような人口減少があります。そこにコロナのパンデミック襲来。大きな人口移動の兆しが出てきました。2020年5月ごろから東京を転出する人が転入する人の数より多くなり始め、今はまだ周辺の埼玉、千葉、神奈川の中小都市への移住が目立ちますが、希望では長野、山梨、群馬などの緑に恵まれた市町村に移りたいという人が多いようです。政府は以前から地方創生を看板にして「いいかも地方暮らし」といった移住応援サイトを立ち上げ、また全国の地方自治体もUターン、Iターンなどを呼びかけ、あれやこれやのイベントを開催して、都会の若者やリタイヤした高齢者の移住促進に力を入れてきました。正直、もう一つ大きな流れになりませんでしたが、今回のコロナ禍で地殻変動の予感がします。地方移住促進情報サイト「SMOUT(スマウト)」にはコロナ前は毎月500件程度のアクセスが9月以降2000件に激増、その7割が20〜30歳代の若者層だそうです。移住のノウハウや経験談が載る本「コロナ移住のすすめ」「東京脱出論」「いきたい場所で生きる僕らの時代の移住地図」「田舎暮らしの教科書」が次々と出版され、書店にコーナーができるほど。


ただ、夢見る理想の田舎暮らしと実際に住んで感じる現実とは、大なり小なりギャップがあるものです。とくに都会育ちの人にとっては田舎の集落の人々との良好な関係はそう簡単に構築できないでしょう。都会のマンション生活とは異なり、全人的な付き合いになりがちで、プライバシーなど二の次という面もあり、そこで挫折、失望して都会に引き返す例も少なくないようです。そのため、多くの市町村ではお試し移住を進めており、また住宅メーカーのダイワハウスでも全国14カ所の一戸建ち住宅「暮らす森」をお試し移住に提供しています。一方、中世以来のムラ社会も時代の波に洗われています。令和の今、都会の空気を吸った若者が何人かはいて、ネットで世界とつながる農業、漁業の担い手が増えているから、コロナにかかった者は村八分だという古い感覚の地域はやがて消えていくでしょう。田舎社会も今、大変化の真っ最中です。では、令和の人口大移動の波はコロナ収束によって止まってしまうのか、はたまたゆっくりと不可逆的に進んでいくのか。今はなんとも言えませんが、山が動いたと後世の歴史家が記述するころ、コロナに打ち勝った日本社会が、今以上に活力ある社会になっていることを祈りつつ、今しばらく辛抱我慢の日々を送りましょう。




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