「ああ」というため息が洩れたことだろう。「緊急事態宣言が出ても休業要請はしないように」との要望書を出していた日本百貨店協会だったが、3度目の緊急事態宣言(4月25日〜5月11日)が東京都・大阪府・兵庫県・京都府に発せられた中に、「百貨店など大型商業施設への休業要請」が入っていたからだ。「消毒・換気対策をしっかりしているので、店内での感染拡大はない」と実績をアピールしていたのだが、昨年に続いて店が開けられない状態となると、売上減少、赤字決算、果ては経営破綻という悪夢が覆いかぶさる。それでなくとも、バブル経済崩壊後の低成長期から、キラキラ光る存在だった百貨店という存在が次第に色あせて、売上高も長期低落傾向をたどっているのに。さまざまな企業努力で業績回復した店もあり、21世紀に入ってからはインバウンドという大波が押し寄せ、「爆買い」という神風も吹いて、新たなビジネスモデルをつかんだかに見えたが、昨年来の新型コロナウイルス蔓延が経営体力を削いだ。


「百貨店冬の時代」がしばらく続きそうだ。いや、もう春は来ないのではないか、という声も出始めている。1852年にパリで開店した「ボン・マルシェ百貨店」という新しい形態の商業施設が、産業革命で大量に出現した消費意欲旺盛の中間所得市民層にうけて以来、世界各国に広まり、日本では1904年、三越百貨店が第一号となった。ワンランク上の憧れの品々を求める客であふれる時代が長く続いたが、スーパーマーケット、大型ショッピングセンター、アウトレット、各種専門店、テレビ通販・ネット通販といった強力な競争相手が次々と出現して、デパートの優位は失われてきた。全国の百貨店の売上高ピーク9兆円超は20世紀末の数字で、昨年は4兆円台にまで下落し、今や小売業界全体の4%に過ぎなくなった。2020年は象徴的な出来事があった。山形県の地元資本の百貨店「大沼」が経営破綻して、日本で初めて「県内にデパートが一軒もない県」となった。さらに、徳島県も「百貨店空白県」第2号となり、地方都市の閉店ラッシュが加速した。いや、地方都市だけでなく、東京、大阪などの都会でもここ数年、「選択と集中」という経営効率追求から、なじみの百貨店が相次いでフィナーレを迎えた。


経営不振の要因はいくつかあるが、デパートの花形である婦人服、女性ファッション部門の売り上げ低下が大きく響いたようだ。多様な流行に敏感な女性たちは、今やアパレルメーカー側が提供するものをそのまま受け入れるだけでなく、国境を越えて情報を取り入れて、本当に欲しいものを自らの手で積極的に手に入れるという消費行動を示している。いわば目の肥えた消費者であり、商品情報・価格動向に詳しいデジタル人でもある。単に店でじっと待っていては客は来ない時代。専門知識を生かしたコンシェルジュを配置する店、デジタル画像を活用して店に来なくても商品を選択できる売り方、富裕層だけを取り込む戦略で生き残りを図る企業、商品を有効に絞り込んで百貨店から「三十貨店」、あるいは「二十貨店」として生まれ変わる会社、いろいろな専門店をテナントとして入れる集合体にとコンセプトを変える経営者・・・・・・コロナ後の模索が続いている。デパ地下は今も隆盛という現象をヒントに、デパートに何を求めているのか、消費者のココロとサイフを読み取りつつ、21世紀の百貨店の生き残り策をひねり出し、新たな魅力的な形態として甦ってほしい。




株式会社メディカルメイツ